僕は、4年半前の2011年6月に学生バイトとしてウェブ業界に入るまで、ほとんどウェブの知識を持ち合わせていませんでした。

そもそもなぜウェブ業界に飛び込んだかというと、大学に就職セミナーをしに来ていた某ネット広告代理店兼メディア企業C社のKさんという人事の方が、大変熱くウェブ業界について語られて、ほとんど自己啓発セミナーのような感じで心を動かされ、それ以来自分がウェブ業界で働く理由を色々と作り上げていったのでした。

その時に作り上げた理由は今でも正しいと思っているし、ウェブ業界に入ってよかったと思っているのですが、そんな自己啓発的な熱いセミナーに感化されまくった当時の僕を客観的に見ると恥ずかしくもあり、でも正しかったと思うので今でも歴史を繰り返しています(笑)

ちなみに当時の愛読書は『渋谷で働く社長の告白』でした(笑)

いや、いい本ですよ。

先輩方の高い壁・・・

そんなど素人状態で飛び込んだウェブの世界。

ウェブ業界は、ビジネス的に言えば設備投資が最小限で済んで参入障壁が低い業界だし、個人のキャリアとして見ても他の業界に比べると未経験者が飛び込みやすいものだと思います。トレンドの移り変わりが激しいので、ビギナーでも自分の武器を作りやすいからです。

しかし、とはいえ既に高いスキルを持ち、数々の修羅場を経験してきた会社の先輩方と入社したての僕との間には当然高い壁があり、それを乗り越えることは容易ではありませんでした。

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僕を新卒で拾ってくれたインフォバーンKYOTOにもたくさんの凄い先輩がいて、しかもめちゃくちゃヤバイ案件をいくつもクリアしてきていました。当然、各々がデザインやプログラム、ディレクション、プロジェクトマネジメント、そして編集、UXなど、独自の尖ったスキルを持っていて、4年半経った今でもその壁は(少し低くはなったかもしれないけれど)依然そびえ建ったままです。

※あんまり前の職場や先輩を持ち上げても寒いかもしれませんが、本当に本当に本当の話だし、同じように感じるビギナーがいるはずだと信じて本音で書いてます。当然、前職の提灯記事じゃないですよ(笑)

とにかく、入社当初完全にウェブ業界のビギナーだった自分にとって、同僚との差はものすご〜く長くて高くて分厚いものだったのです。

ビギナーが解析を武器にするメリット

そんな僕ですが、入社1年目の終わりごろからアクセス解析の手伝いを社内で任せてもらえるようになり、その後初級ウェブ解析士の資格(後述)を会社で取らせてもらった辺りから

【得意技:アクセス解析】

として社内の仕事を回してもらえるようになりました。

これが本当に自分にとってとても良かったです。何故なら、ウェブマーケティング初心者がアクセス解析を武器にすることには、非常に大きなメリットがあったからです。ビギナーが解析を武器にすることのメリットは、大きく分けると次のふたつです。

1. 解析を極めることで意見(企画)を主張しやすく(通りやすく)なる

社内、社外に対して意見や企画を通す方法を3つに分けるとすると ①企画のロジックをデータで示し、納得させる ②提案者に実績があるために信頼され、納得させる ③情熱で押し切って、納得させる といった感じになると思います。

このうち、ビギナーにもできることは①か③しかなく、さらに準備(勉強)できるのは①の「企画のロジックをデータで示し、納得させる」しかありません。

①の方法で企画を通す方法をさらに2つに分けると、 [1]データ(量的・質的)で根拠を示す [2]成功事例を示す のどちらかしかありません。つまり、解析を極めて[1]の「データ(量的・質的)で根拠を示す」方法を握ることができれば①の方法で自分の企画を通すことに近づけるのです(自分の企画と言っても、データから得られた仮説を基にした企画です)

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僕は解析を学ばせてもらってから、特にこの構造の恩恵を大いに受けられました。社内で企画会議等をする際、クライアントに企画を提案する際などに、周りの先輩とは違う視点で企画を語ることができたことが、自分の武器になりました。

2. 解析データから、多くの”自分だけが知る事実”を発見できる

解析データの中には、必ずしもサイトの改善や新たなキャンペーンの企画には役立たないけれど、面白い発見に繋がるようなものもあります。

例えば、モバイルバッテリーを売っているRUNNER(※)さんという会社が自分のクライアントだったとして、自社サイトへの流入クエリを見ると「RUNNER Icheero 比較」というものが非常に多いということがわかったとします。クライアントに「他社製品との比較コンテンツを作りましょう」と提案してみることはできますが、大体の場合ブランド企業は、自社のブランド製品とライバルブランドの製品を自社のサイトで比較するなんてことをしたがりません。

でも、公式サイトにそのクエリでの流入が入ってきてしまっているというのは、そこに満たされていない需要があるということになります。

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ここから何をするかは発見した解析士次第だと思いますが、僕はこういうデータを見るたびに「消費者は結局、最後は似た商品同士で比較した上でよりいい方を買いたいだけなんだろうな」「こういうニーズを価格コムが全部吸収しているのか、恐ろしい」「個人でやるレベルなら、ニッチな商品でならまだまだ比較サイトで勝負できるんじゃないか」みたいなことを考えていました。

こういう発見は、本を読んだりマーケターのブログを読むことで頭で理解することはできますが、実際にどのくらいの量の人がそういう需要を持っているのかという生データに触れると、頭で理解したのとは全然違う知見が得られます。僕の場合、そういう発見が新しい企画を考える際のヒントになっていました(まだ大してインパクトある仕事をしたわけじゃないので、胸を張って「これが俺が考えた企画だぜ!すごいやろ!」とは言えないのが悲しいですが笑)

※ANKERのモバイルバッテリーを買ったばかりで、同社のことが好きだからインスパイアされたようなこの名前RUNNER(ランナー)にしましたが、ANKER社さんと僕は過去に一切仕事などはしていません。上の例はあくまで妄想です。また、Icheero(イチーロ)もCheeroにインスパイアされただけの妄想ブランドです

以上2つの実体験に基づいて、僕はウェブマーケティングのビギナーさんがアクセス解析を武器にすることに大きなメリットを感じています。

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ウェブ解析士資格取得が、解析を武器にするきっかけになった

【得意技:アクセス解析】だと周りに思ってもらえるようになった1番の理由は、僕に解析仕事を任せてくれた上司のおかげとしか言いようがないのですが、もうひとつ確実に大きかったのは上級ウェブ解析士の資格を取得したことでした(これすら、上司が資格取得を勧めてくれたから出会えたのですが・・・)

ウェブ解析士とは、ウェブサイトを分析するスキルを体系的に学び、資格認定してもらう民間の資格で、初級・上級・マスターという3つのレベルを順番に受験するというものです。全国各地で講座が開講されていますので、興味があればこちらをご覧ください。

WACAウェブ解析士認定講座 – ITとWEBマーケティングの実践資格なら

ウェブ解析士の資格取得費用は、はっきり言って安くはないです。特に個人で上級まで取ろうと思うとかなり高いです。

2015年10月現在、初級ウェブ解析士は試験費用11,000円と認定料に5,000円の合計16,000円。上級ウェブ解析士は試験費用75,600円と認定料10,800円の合計86,400円です。上級を受験する資格に初級資格の保持が含まれるため、上級まで取りたい人は合計約100,000円の出費となります。

それでも僕が、ウェブ解析士資格を取得できてよかったと感じるのは、主に次の4つの理由によるものです。

  1. 解析士として社内に認めてもらえ、自分のキャラ付けができた
  2. 前述の通り、自分の得意技をアクセス解析だと社内の先輩から認めてもらうことができ、キャラ付けできたことは非常に大きいメリットとなりました。

    会社で「◯◯ならアイツだよね」というキャラを確立することは、言うは易く行うは難しですが、僕の場合は当時社内に解析を武器にしている人がいなかったため、うまいことそのポジションを掴むことができました。

    キャラ付けに成功したことで解析の仕事をたくさんやらせてもらい、それが経験値に繋がり、自分なりに勉強して改善していくことで、だんだんウェブマーケティングビギナーから脱出することができました。

    もちろん、アクセス解析は資格がなくてもできる仕事ですが、未経験の人が仕事を回してもらう際のきっかけとしては、この資格を持つ効果はとても大きいと思います。

  3. 名刺交換の際にその場でプレゼンできるようになった
  4. 対・社外の場面で感じたメリットとしては、名刺交換の際にその場でアクセス解析についてプレゼンできるようになったことが大きなメリットでした。

    僕が資格を取得してからこれまでの期間に、ウェブ解析士資格もだいぶ有名になってしまったので、いつまでこの恩恵にあずかれるかはわかりませんが、名刺に「上級ウェブ解析士」と書かれているのを見たクライアントやパートナーさんの多くが、この資格について質問してくれました。

    「なにこれ?」と聞いてもらえたらしめたものです。ウェブ解析士という資格についてとアクセス解析ができることについて、アクセス解析をさせてもらえたら自分ができることについて簡単に話せるようにしておけば、だいたい話が盛り上がります。

    仕事になるかどうかは、結局その後の営業スキル次第ですが(苦笑)少なくとも初対面での印象づけはバッチリですし、最悪名刺交換時に「喋ることがない」という状況は回避できます。

    僕は「Leo」という名前、「京都」という会社の所在地と合わせて、「上級ウェブ解析士」という肩書きのおかげで、イベントで名刺交換をする時の世間話に困ったことがほとんどありません。これだけで5分は話せる(笑)

    なお、資格を名刺に記載することで、名刺交換時のネタに困らないというのは”ウェブ解析士あるある”です。そしてその際に「初級・中級もあるの?」と聞かれて、「いえ、初級・上級・マスターなんです(笑)」と答えるところまでが上級ウェブ解析士あるあるでしょう。

    「中級じゃんそれ!(笑)」

  5. ネットワークの確立
  6. 資格を取得したことで、ウェブ解析士資格保持者の横のつながりを持てるようになったことも大きなメリットでした。それまで社内で、ほとんどひとりで解析作業をしていたため、外の世界にこんなにたくさん解析士がいて、みんな同じような壁に当たってるんだと気づけた時の安心感はすごかった。

    もちろん困ったことがあった時には仲間に助けを求めることができるし、カナダに留学することになりましたと言ったら送別会を開いてくれるような、とても素敵な仲間にも出会えました。

    とにかく同業者で別の会社の知り合いというのが、会社の先輩たちとは違った意味で僕にとって心強く、これはウェブ解析士資格を取得したおかげで得られた恩恵でした。

  7. 登壇の機会が得られた(CSS niteで話せたのが嬉しかった)
  8. 上級ウェブ解析士の資格を持っていることによって、勉強会やセミナーに何度か登壇させてもらうことができました。

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    中でも印象的だったのは、CSS Nite in KOBE Vol.6にてオープニングトークを務めさせてもらえたこと。ウェブ解析士協会のスポンサー枠で10分だけライトニングトーク枠で登壇させてもらい、36名の出席者の方に『ざっくりサイト訪問者ニーズ分析』というテーマでお話をさせていただきました。

    人前でのプレゼンは、超緊張するけど楽しめるタイプの僕にとっては、新卒4年のこのタイミングでCSS Niteに登壇させてもらえたことは、例えライトニングトーク枠とはいえ非常にありがたいことで貴重な経験でした。

    もちろん、ウェブ解析士全員が誰かに登壇の機会を与えてもらえるというわけではありませんが、そういった登壇できるチャンスも少なくはないということは感じます。

    僕にとってはこの資格を取ったところから解析士としての活動が本格スタートし、夢中でローカルな勉強会などに参加しているうちに自分が発表する側に回ることができたので、これもウェブ解析士になって良かったことのひとつとしてカウントしています。

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ウェブ解析士ビギナーが、資格をもっと活かすためにできること

ウェブ解析士になりたての人からよく聞く話として「せっかく資格を取ったけど活かせていない」というものがあります。

おそらく他の資格も同様でしょうが、資格を取った後に実戦の機会を与えてもらえるかどうかは運次第だと言えます。

せっかく資格を取ったのに活用できなかったら悲しいです。これは資格取得のデメリット・・・とは言いませんが、しかし取得に費やすお金や労力を考えると、その分がマイナスになってしまいかねません。

僕のように職場でアクセス解析要員として使ってもらえればベストですが、そうでない場合は「なかなか活用できない」で終わってしまうのでしょう。あるいは就職(転職)するためにこの資格を取得したという方の場合、”実戦経験のない人を取りたがらない企業”という壁があり、その壁のせいで実戦経験を積むことができないという悪循環に陥ることもあるみたいです。

そんな、なかなか実戦経験を積めないでいるウェブ解析士ビギナーの方から、勉強会などで「どう実戦経験を積めばいいですかね」と相談された際に、いつも僕は「自分でブログやアフィリエイトサイトを始めるといいと思います」と答えていました。

僕の場合は、案件でいきなり試せないことは前職時代のスタッフブログ『見習い小僧ブログ(当時は全部自分で管理していた)』でまず試してみていました。途中からは趣味で始めた『北欧ヒュゲリニュース』のデータを分析したり、このブログのデータを分析したりしてなるべく自由に実験できる場所を自分で用意するようにしています。

ウェブマーケティングビギナーがサイトを0から作るというのはなかなか容易なことではないですし、個人ブログとはいえライティングだって人によってはハードルが高いと感じてしまう人もいると思いますが、別に最初から完璧じゃなくて全然いいのです。

アメブロでもライブドアブログでもBloggerでもいいので、まずは自分の場所をオンラインに持つことから始め、そこに何か自分の好きなものをテーマにしたコンテンツを載せていくと、しばらくすると自分が思いつきもしなかったようなニッチなクエリで検索流入が見られるようになるはずです。

そうしたら今度は、何でそのクエリでの流入が発生したのかを考えて、リサーチしてみると、意外に世間の需要と供給の間にギャップのあるニッチな市場が見つかったりするものです(解析士として、意地でも見つけるのです!!笑)

この分析&改善活動こそ、解析士のお仕事です!自分のサイトで実戦経験を積んでいけば、就活でも転職でもその経験を話すことができるようになるでしょう。

短期間で必ず成果が出るとは限りません。ちょっと腰を据えて、1〜2か月毎日更新すれば何かは見えてくるはずです。

Googleアナリティクスをサイトに設置するのを、忘れないようにしてくださいね!

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まとめ

最初に「前職の提灯記事じゃないですよ(笑)」と書きましたが、ウェブ解析士資格の提灯記事でもありません(笑)

また、僕が上級ウェブ解析士に合格した2012年以降に、資格の内容自体も、資格を取り巻く環境も変わっています。「ビッグデータ」「データサイエンティスト」という言葉が流行って廃れてから随分経ちましたよね。

ですので、ここで書いたことのすべてが今の時代に適用されることかどうかはわかりませんが、僕の場合は解析を武器にしてウェブマーケティングをやってきて受けた恩恵が計り知れなかったのと、ウェブ解析士資格が自分にとって非常に役立ったと思っているので、その点を1度まとめておきたく、記事にしました。

なお、ウェブ解析士資格は以前、こんな紹介のされ方もしました。

ウェブ解析士認定講座って資格商法だなwebプロからみた評判 – うさもふ

今回の僕の記事では、ウェブ解析士としてやってきて良かったことを中心に書いてきましたが、この方のブログ記事には同意できるところもあるんです。

普通に市販のWEBディレクションの本を買ったり、広告会議や宣伝会議などの本を読む。自分で独自ドメイン取ってレンタルサーバー借りて、アフィリエイトでもやって稼いで、実績作ったほうが就職や転職するするときに有利です。

自分は個人でも複数サイト運営してるので、勉強会や転職活動の時は、そのサイトのPVとかコンバージョンとか話すると、じゃあうちのサイト改善できますか?余裕です。の一言で話進むし。

引用:ウェブ解析士認定講座って資格商法だなwebプロからみた評判 – うさもふ

その通りで、前述の通り未経験未就職状態から仕事を得ようとすると、資格取得だけでは不十分かもしれません。解析ツールなんて資格がなくても扱えるんだから、ただ資格を持っているだけの人より、資格を持っていないけど自分でトライ&エラーを繰り返して月間100,000PVのサイトを作った人の方が魅力的です。

でも、自分だけでこのレベルのことをできないほどビギナーな方にとっては、解析士資格を取ることで「ああ、ウェブマーケティングの世界ってこうなってるのね」といった感じで理解するのにいいかなと思うし、横のつながりを作ったりしていくところを先に始めるのも悪くないんじゃないかなと思います。

あとは、初級解析士でも16,000円する取得費用を高いと考えるか安いと考えるか。上に紹介したブログの人のように、16,000円払うくらいだったら自分でサイト作って成長させたほうがいいよねと考えるのか(まあ、アフィリエイトで実績を作るって全然簡単じゃないし、資格取得にかかる16,000円分を時給換算したら、その範囲内でアフィサイトを未経験から成功させるなんて無理だけどね。この人は正しいけど、この人は普通よりすごい人)

こんなところで、僕が考える『Webマーケ初心者がウェブ解析士資格を取るメリット&デメリット』は書き切れたかなと思います!

何か質問があれば、Twitterで@LeoTohyamaまで、あるいは資格のことなら解析士協会にお問い合わせしていただくのがいいのかなと思います。僕はTwitterのリプライなら比較的早くできると思いますが、来月からちょっと忙しくなる予定なので返信が遅かったらすみません。

以上です!